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広島高等裁判所 昭和23年(ネ)72号 判決 1948年12月08日

控訴人

上田直市

控訴人

上田アサノ

被控訴人

今津野村農地委員会

主文

本件控訴は孰れもこれを棄却する。

控訴費用は控訴人等の負担とする。

請求の趣旨

控訴人等は「原判決を取消す、被控訴委員会は別紙目録記載の不動産に対し定めたる第四次農地買收計画決定の取消をなすべし、訴訟費用は第一、二審共被控訴委員会の負担とす」との判決を求める。

事実(省略)

理由

昭和二十二年十二月二十六日に施行された自作農創設特別措置法の一部を改正する法律第四十七條の二第一項は、行政廳の違法な処分の取消又は変更を求める訴の出訴期間に関する日本國憲法の施行に伴う民事訴訟法の應急的措置に関する法律(昭和二十二年法律第七十五號)第八條に対する特例を設け、この法律による行政廳の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴は、昭和二十二年法律第七十五号第八條の規定にかかわらず、当事者がその処分のあつたことを知つた日から一箇月以内にこれを提起しなければならない、但し、処分の日から二箇月を経過したときは同條の規定にかかわらず訴を提起することができない旨を規定してその出訴期間を短縮し、右改正法附則第七條第一項はその経過規定としてこの法律施行前にした自作農創設特別措置法による行政廳の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴はこの法律施行前にその処分のあつたことを知つた者にあつては第四十七條の二第一項の規定にかかわらずこの法律施行の日から一箇月以内にこれを提起することができる旨を規定しているので右改正法施行前になされた自作農創設特別措置法による行政廳の処分の取消又は變更を求める訴の出訴期間については昭和二十二年法律第七十五号第八條の規定の適用はなく、その特別法たる右改正法附則第七條第一項の適用あることは明文上疑を挾む余地はない。しかして、控訴人が被控訴委員会の樹てた本件農地の買收計画に対して昭和二十二年十月九日になした異議の申立に対し、被控訴委員会のなした異議却下の決定謄本が同年十一月十七日に控訴人等に送達せられたことは、控訴人等の主張自体によつて明かであるから控訴人等は遲くとも同日には右決定のあつたことを知つたものと認むべきである。したがつて控訴人等が被控訴委員会のなした右決定の取消又は変更を求める訴を提起するには、右改正法施行後一箇月以内である昭和二十三年一月二十六日(二十五日は休日)までになさねばならぬことは敍上説示に照して明かである。たとえ被控訴委員会のなした決定謄本が控訴人等主張のように遲れて送達されたため、控訴人等がこれに対し自作農創設特別措置法第七條第四項所定の期間内に訴願を提起することができなかつたとしても、右決定に対する本件訴の提起期間を右と別異に解すべきいわれのないことは言を俟たない。しかるに、本件訴状が廣島地方裁判所尾道支部に提起されたのは、昭和二十三年四月十九日であることは、本件記録に徴し明かであるから、本件の訴は出訴期間経過後に提起されたものであつて、不適法のものといわねばならぬ。

しからば、本件の訴は爾余の爭点につき判斷するまでもなく、不適法としてこれを却下すべく、右と同趣旨の原判決は洵に相当であつて、本件控訴はその理由がないから民事訴訟法第三百八十四條第一項に則りこれを棄却し、訴訟費用の負擔につき同法第八十九條、第九十五條を適用して主文のとおり判決する。

(目録省略)

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